オレンジフィンカイザープレコ 飼育のポイント

オレンジフィンカイザープレコ水槽に、殺菌灯が良い

殺菌灯を使う理由 

オレンジフィンカイザー(今回飼育したものは正式にはイリリ川産のクイーンオレンジフィンカイザー)プレコは、細菌や有機物の少ない清浄な水質を好みます。そのような水質を保つために、私たちは殺菌灯を使用しました。殺菌灯は、水中の細菌を減らすだけではなく、高分子有機物の鎖を切断することで、有機物がろ過細菌に分解されやすくなり、飼育水中の有機物濃度を下げる働きもあるのです。

 

経験上、水槽中の細菌数と有機物濃度は、日本の清流、例えば、四万十川や高津川の中流域と比較して断然高いのです。オレンンフィンカイザーは、プレコの中でももっとも綺麗な水質環境に棲息していますので、その水質は四万十川中流域などに近いレベルで清浄であると予想されます。

18年ほど昔、私達がシングー川産のL−18オレンジフィンカイザーの飼育に四苦八苦していたとき、世界でももっとも状態の良い魚を出荷するドイツの観賞魚シッパーから、絶対的に綺麗な水を用意しなさいとアドバイスされました。彼らの設備には殺菌灯が装備されていたことが印象的だったのです。

 

 

殺菌灯を使用した水槽では、オレンジフィンカイザー以外のプレコたちも、食欲が増し、体が大きくなり、色もどんどんよくなっていきます。
ゴールドエッジマグナムも、最初は薄く平べったく、全体的に薄い黄色っぽい色をしていましたが、2ヶ月もすれば、体高が出て、オレンジ色っぽくなった尾ビレの先が良く目立ち、木陰に隠れていてもどこにいるのかすぐ分かるくらいになりました。
ブルーフィンパナクエも、飼育期間が長くなるに連れて、青がだんだん澄んだ青味になってきました。


色揚げとまでは言えないかもしれませんが、プレコ飼育にこんな楽しみがあったというのも、うれしい発見です。

 

 

殺菌灯の使用について
殺菌灯は、水中に漂う菌に対して紫外線を照射するので、ろ材などに定着したろ過細菌を殺すことはありません。

今回私たちは、水槽を立ち上げる際に、ろ過細菌がすでに定着しているろ材を用意したので、最初から殺菌灯を点灯する方法をとりました。しかし、ろ過細菌なしの状態でスタートさせる場合、すぐに殺菌灯を点灯すると、ろ過細菌がろ材に定着するのを邪魔することになり、生物ろ過の立ち上がりが遅くなってしまうことがあるため注意が必要です。 


生物ろ過は、できるだけ魚を入れる前に、立ち上がっている状態にしておきたいものです。ろ過が立ち上がった後、殺菌灯を点灯させ、1日以上経ってから魚を入れます。


殺菌灯は、有機物を分解することはできますが、生物ろ過がおこなう硝化作用と同様の働きをすることはできません。そのため、生物ろ過の安定しない水槽で殺菌灯を使用しても、アンモニアや亜硝酸が発生し、魚に害を及ぼす可能性があります。万が一、ろ過が立ち上がっているかどうか微妙な状態でも魚を入れなければならないような場合は、ゼオライトと活性炭を使用することをおすすめします。

 

オレンジフィンカイザープレコを始め、中流域に棲息するプレコを飼育する水槽は、水温高めが良い

飼育水温について 

オレンジフィンカイザープレコの飼い方を調べると、適正水温は、最低22℃〜最高28℃、だいたい25〜27℃くらいが目安かな、というものが多いです。私たちの水槽でも、それに倣い、最初は26℃でセットし、しばらく様子をみていました。が、プレコたちは隠れてばかりで、なかなか姿を見せてくれません。

 

ふと、思いついて、水温を28℃に上げてみました。

オレンジフィンカイザープレコが棲息しているシングー川(もしくはイリリ川)の水温を考えてみても、それくらいあるのではないかと考えたからです。

 

 

水温28℃の効果 

そうすると、だんだん動きが変わってきました。食欲が出てきたのか、エサに食いつく姿も見られるようになり、フンの量が明らかに増えてきました。エサの量を増やしたわけでもないので、コケや流木をかじったりしているせいかもしれません。とにかく、少しずつ場所を変えては張り付く…そんな様子が見られるようになりました。

 

今では、お気に入りのテリトリーはあるようですが、その範囲をチョロチョロと動き回る姿が見られます。黄色い背ビレや尾ビレが岩組の間からチラリと見え隠れする瞬間がとても楽しい水槽になっています。

水流をつくると良い

プレコの体型と水流 

オレンジフィンカイザープレコなど、清流が棲息域のプレコの仲間たちは、もともと、流れがある川に棲んでいます。

 

プレコの体型に注目して見ると、顔の先に向かって細長く、体も緩やかな弧を描いた流線型をしています。これは、流れのある場所で、岩などに張り付き、効率良く流れをかわす、そんな彼らの生活スタイルに合わせて進化してきた体型だと思われます。

 

余談ですが、同じプレコと呼ばれていても、中国プレコは、コイ系。南米プレコはナマズ系。この2種は、まったく別の進化をたどってきたはずなのに、同じような体型をしています。これは、どちらも同じような環境である、”流れのある川”に棲息していたからだと考えられます。

 

リオプロップで水流をつくる

 

水流とその効果 

そのような、”流れ”のある本来の棲息環境を再現するために、水槽内で水流をつくりました。リオプロップを使用することで、大きな水流をつくることができます。


水槽内の水流は、単なる流れをつくるだけでなく、さらに良い効果をもたらします。

・溶存酸素濃度が上がる。

・水中のよどみがなくなり、水質の浄化が進む。

・プレコがエサとして好む、緑藻や珪藻が生えやすくなる。

 

流木や石などのレイアウトによっても、水の流れは変わってきます。水流がある中でも、凸凹のある石や流木があると、プレコの休憩場所になります。その場所が水槽正面になるように配置するなど、工夫すると、プレコの観察がしやすくなるかもしれません。よく隠れてしまいがちな最初の内は特に有効です。プレコたちの動きに合わせるなど、ポンプの位置を変えて、最適な場所を探してみてください。


手間のかからない水槽にするには、ヴォルテスと、ゲオファーガスが良い

オレンジフィンカイザープレコの食性から…

オレンジフィンカイザープレコは鮎のような魚…なのかもしれません。(もしも日本の淡水魚に例えるのなら。)

 

オレンジフィンカイザーは、植物食性が強いプレコです。自然の川では、岩などに生えた緑藻などを好んで食べています。

 

実は、オレンジフィンカイザープレコは、アマゾンで食べられる魚のなかでも1、2を争うほどに、くさみがなく、旨い魚なのだそうです。これは、現地で様々な熱帯魚を食べてきた方から聞いた話です。ただし、オレンジフィンカイザーは現地でも食用魚ではないので、食べられる機会など滅多にないということなのですが…、それはいったいどのような味がするものなのか。きれいな淡水の川で、岩に生えた緑藻を食べて育つ美味しい魚…想像するに、鮎みたいなかんじだろうか、と思ったりしているのです。

 

 

ヴォルテスを使う

ヴォルテス2灯とゲオファーガス

まさか食べたりはしませんが、水槽内でも、照明をあてることで、オレンジフィンカイザープレコが棲む川に似せた環境をつくることができます。


90cm水槽くらいでしたら、ヴォルテス(白球)2灯の使用で、レイアウトに使用している石やガラス壁面に緑藻のコケ類が生えてきます。プレコたちは、それらに張り付いて緑藻を食べます。


おかげで、プレコたちの食欲は満たされますし、コケ掃除の回数は、ほかの魚飼育水槽よりも圧倒的に少なくて済みます。また、エサの量は少なめでOK。そのため、水質もきれいな状態を保ちやすくなる。という、とても良い循環が生まれます。


ちなみに、普段は水道水で換水していますが、あるときRO水で換水したことがありました。そのときは、コケの発生が少なかったためなのか、オレンジフィンカイザーの体色がやや薄くなるなど、あまり良い効果は見られませんでした。


 

ゲオファーガスが役に立つ

緑藻はプレコが食べているとはいえ、照明のよくあたる底砂の表面に、ラン藻などが生えてしまうということはあります。これらのコケは、ゲオファーガスを泳がせることで、防ぐことができます。ゲオ(大地)/ ファーガス(もぐもぐする)という意味をもつ魚だけあって、彼らは底砂をくわえて、よく、もぐもぐします。このおかげで、私たちの水槽は、ほとんど底砂表面のコケ掃除をすることがなくなりました。

 

美観を損ねるコケの代表格であるラン藻。主に有機物がラン藻の原因と言われますが、この水槽の場合、残りエサなどが底砂の表面に蓄積しやすかったのだと思います。さらに、底砂内は水が通ることがなく、嫌気状態になりやすいため、ラン藻が発生しやすくなります。ゲオファーガスによる、底砂をくわえる行為は、底砂を定期的にかき混ぜて水を通すことになり、それがラン藻の発生を抑える効果になったと考えられます。

 

ちなみに、私たちの水槽では、水槽を立ち上げた頃、底砂のコケ退治目的としてコリドラスアドルフォイを入れていました。しかし、プレコに合わせて水温を上昇させたところ、コリドラスアドルフォイにとっては水温が高過ぎたようで、調子を崩してしまいました。ゲオファーガスは、28℃くらいの環境にも適応しやすいという意味でも、このようなプレコの飼育水槽で、一緒に飼育することをおすすめできる魚です。

 

底砂表面にラン藻が生えている状態 ラン藻がなくなった!


左:ゲオファーガスを入れる前。 右:2週間後。底砂表面のラン藻がなくなっている。




 

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